G2-MFA 奇形生物

レター                              妖精研究誌

         奇形生物

            シャルパツノフェ・ルメリ(妖精研究所)


1. 背景

 人類が妖精の星に入植して約30日が経過し、妖精の星の大まかな姿が判明してきました。妖精の星の環境は私たちの祖なる星と驚くほど似通っており、食料や大気の心配も今のところほとんどありません。しかしながら、妖精の星には相違点もいくつかあります。

 その中でも奇形生物と呼ばれる固有の生物群は、私たちが妖精の星に居住する際に最初に対策が要求される、非常に重要かつ危険な存在の一つです。奇形生物は私たちが妖精の星に入植して以来、明確な殺意を伴って毎晩のように襲撃しに現れます。奇形生物への対策なしには、生活どころか、安心して基地の外を出歩くことすらままならないでしょう。

 図1  非人型で緑色で縦長の奇形生物

2. 性質

 奇形生物は数パターンの固定の外見を持った、不明な原理で自然発生する移動物体です。現時点では奇形生物の分類学的地位は不明で、奇形生物という呼称による分類の妥当性、またそもそも生物に分類されるべきか否かについても議論の余地があります。

 奇形生物には次の姿のものが確認されていますが、これですべてとは限りません。

  • 人型で人間の死体状のもの
  • 人型で人骨状のもの
  • 非人型で緑色で縦長のもの(図1)
  • 巨大な蜘蛛型のもの

2-1 形態

 既知の奇形生物はすべて歩行が可能で、必ず爆発、殴打、鈍器や飛び道具といった、人間を殺傷するのに十分な攻撃手段を伴って現れます。武器を持たない人型の奇形生物も確認されていますが、腕力が非常に強く、近接戦闘では武装した戦闘員であっても怪我を負う恐れがあります。

 既知の奇形生物のほとんどは、一部の例外的事例(事案1)を除いて、人間よりも早く走ることができません。飛行する奇形生物は現時点では確認されておりませんが、蜘蛛型の奇形生物は垂直の壁を登ることができます。一部の奇形生物はドアや壁を破壊することができます。


事案1

【日付】19日
【被害者】フラワーポット夫人
【記録】フラワーポットは夫人と14歳の長男の3人家族でした。19日午後、フラワーポット一家は自宅のあるポッドから約500メートルの森林内の地点Aで植物標本の採集を行っていました。日没が近づいたころ、フラワーポット一家は薄暗くなった森林に恐怖を感じ、採集を切り上げて、入手した植物標本を持って歩いてポッドを目指しました。ポッドから約400メートルの地点Bで、フラワーポットはA付近からガサゴソと音がするのを感じ、小動物ほどの大きさの何かが猛スピードで近づいて来ていることに気が付きました。フラワーポット一家は植物標本を地面に置き、全速力でポッドを目指しました。フラワーポットと長男がポッドに到着したあと、少し遅れて追いかけてくるはずの夫人が一向に到着しませんでした。フラワーポットはその夜、ポッド周辺を一晩中見張り続けました。20日朝、フラワーポット夫人はポッドから約200メートルの地点Cで死体で発見されました。


2.2 発生

 奇形生物は主に日没後の地表面で自発的に大量に発生しますが、人工の建物内にも発生した記録があります(図2)。日中の屋外で奇形生物を見かけることはまれで、発生した瞬間の目撃事例もまだありません。

 奇形生物は、多くの場合、時間経過で自発的に消失します。消失した奇形生物が実際に存在ごと無くなっているのか、それとも不可視になっただけでまだその場に留まっているのかは不明ですが、不可視の状態で待ち伏せ、もしくは人間を直接的に攻撃してくるといった事例は確認されていません。いくつかの種類の奇形生物は、直射日光に当たると自発的に炎上し、死亡します。奇形生物が戦闘や炎上によって死亡した場合、消失時とは異なり、死体や所持品の一部が残ります。

2.3 行動

 奇形生物は総じて、自身が死亡するまで付近に居る人間を手当たり次第に追跡し、殺害を試みます。追跡している人間が建物内に逃げ込んだ場合、出入り口の前で翌朝まで待ち伏せすることがあります。

 奇形生物は原生の動植物や原住民に対して危害を加えることはなく、外来種である私たち人間を選択的に襲撃します。襲った人間の死体を摂食する様子は確認されていません。

   図2 奇形生物の発生した倉庫

3. 対策

 奇形生物を発見した場合、どのような姿態か、こちらを発見しているかに関わらず、その場から全速力で避難してください。奇形生物に対して唯一安定的に採れる防御策は、ポッド内に避難して出入り口に鍵をかけることです。奇形生物が武装した人間の至近距離に直接出現した事例は確認されていないため、ポッド内の安全を守るために、ポッド内には常に戦闘員を配置してください。

 やむを得ず奇形生物との戦闘を行う場合は、熟練した戦闘員が銃器を用いて行ってください。ポッドの外で奇形生物が待ち伏せしていることが分かっている場合、最寄りの別のポッドに応援を呼び、付近の奇形生物を排除させて安全を確保してください。


2021年1月27日 MirageFairy Server創作部